『旭山動物園』は北海道旭川市が運営する公立動物園ですが、日本で最も北に位置した動物園です。また、旭山動物園は北海道の公立動物園としては、『札幌丸山動物園』、『おびひろ動物園』に続き3番目の動物園です。建設計画が持ち上がったのは1964年でしたが、設置場所の選定に紆余曲折があり着工は2年後の1966年(昭和41年)4月でした。旭山動物園は1967年(昭和42年)7月に開園されましたが、当初展示された動物は全75種505点でその内の200点が鯉だったということです。
開園後20年を経過して施設の老朽化が目立ち始めた頃、1994年(平成6年)旭山動物園の1番の人気者だった『ニシローランドゴリラ』が急死する事態が発生しました。原因調査の結果、キタキツネが媒介する『エキノコックス症』であることが判明したため、止む無く一旦休園することになってしまいました。急遽感染対策などを施して再開に漕ぎつけましたが市民の不安を払拭することが難しく、入場者の減少に歯止めが掛かることがなく1996年(平成8年)には30万人を切ってしまいました。

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形態展示から行動展示への転換

1997年(平成9年)より、この事態を打開すべく当時の園長小菅正雄(こすげまさお)を始め、飼育員などのスタッフが一丸となり、これまで動物の姿や形を見せる『形態展示』のシステムを脱却し、世界で初めて動物本来の動き廻る姿を見せる『行動展示』のシステムを導入することに決めました。

初年度はまず手始めに、これまでの常識を覆すほど“巨大な鳥籠”を作り、その中を鳥たちが自由奔放に飛び回ることが出来る『ととりの村』を完成させました。続いて翌年以降、『もうじゅう館』、『さる山』、『ペンギン館』、『オランウータン舎』等々、矢継ぎ早に“新たな行動展示スタイル”の施設をオープンさせ、その都度世間に話題を提供したことで入場者数が急激に回復していきました。

2005年(平成17年)には、これら旭山動物園の斬新な取り組みに様子がNHKの『プロジェクトX・~挑戦者たち~旭山動物園~ペンギン空を翔ぶ~』など報道番組で放送され、その年の入場者数は206万人と異次元の記録を作りました。それに止まらず2007年(平成19年)には、何と東京上野動物園の350万人に迫る307万人の記録を作りました。流石にその後の入場者数は沈静化し150万人程度に落ち着きましたが、それでも第1位の東京上野動物園、第2位の名古屋東山動物園に次いで、現在でも第3位の地位の確保に繋がっています。

モグモグタイムって何?

『モグモグタイム』とは、動物たちが“餌を食べる時間”のことを意味します。旭山動物園の飼育員の人たちは、動物たちが備えている“最も本能的な行動”を見せたいという思いから、“食べること”と“遊ぶこと”に着目しました。その原点を踏まえて実現したのが、プロジェクトXのキャッチコピーに象徴される行動展示の“ペンギンが空を翔ぶ”となった訳です。もちろん展示方法(ハードウエアー)だけでなく、動物の特性によって餌の与え方(ソフトウエア―)にも以下のような工夫や注意を払っています。因みに、各展示ゾーンのモグモグタイムは、毎朝9時30分頃に当日のスケジュールが発表されますので、それを参考に見物ルートを決めると見逃しがありません。

(1) オランウータン
高さ15mもある高所に給餌場を設置し、実際に森の木の上で食事しているような姿が見られます。但し、風雨などの悪天候時や、特に気温が低い日は中止されることがあります。

(2) キリン
キリンの首より少し高い所にエサ籠を設置していますので、食べる時に長い舌に巻き付けて食べる姿が間近で見られます。

(3) アザラシ館
水中ではなく、柵の近くの陸上でホッケを与えます。

(4) ホッキョクグマ館
プールのガラス窓側にエサを投げ込みますので、ダイビングする様子や前足で魚を捕獲して食べる様子が大迫力です。

(5) ペンギン館
陸上で飼育員の手で魚を与える様子や、ダイバーが水中で潜りながらオキアミなどを与える様子が見られます。

旭山動物園の見どころ

現在の旭山動物園は、1967年の開園時と比べると動物の種類は1.8倍、飼育点数は2.5倍(鯉の200点を除く)となっています。詰まり、開園当時とは動物園を取り巻く社会環境(少子高齢化など)や経済環境(マイナス成長など)が大きく変化する中、一地方都市の動物園が規模拡大を図ったことは、驚嘆に値するといっても過言ではありません。それほど動物たちの行動展示に着目したことの効果が大きかったといえます。因みに、日本最北の旭山動物園は他の動物園に比べ、北方系の動物たちが多く飼育していることも大きな特徴となっています。例を挙げるとペンギン、ホッキョクグマ、アザラシ、アムールトラ、ヒョウ、シンリンオオカミなどです。取り分け、冬の厳冬期に隊列を作って園内を散歩するペンギンの姿は、冬期開園時の目玉イベントとなっていますが、最近は余りに人気が出過ぎたため1日2回限りになってしまいました。

混合展示の挑戦

旭山動物園のもう1つのチャレンジは、異なる種の動物を同じ場所で飼育する『混合展示』です。この取り組みは動物たちのストレス解消を狙ったもので、2006年(平成18年)から始まりました。例えば、ゴマフアザラシ&ウミネコ&オオセグロカモメの組み合わせ或いはペンギン&アザラシの組み合わせなどですが、過去にカピバラとクモザルが餌の取り合いで喧嘩となりサルが死亡する事故があり、今後への課題も残されています。

むすび

旭山動物園のユニークなところは動物たちの展示方法にありますが、それ以外に飼育員たちの“野生の動物たちの魅力を引き出したい”という熱意が伝わってくるところにあります。モグモグタイムでは飼育員たちが餌を与えながら動物たちの生態を解説してくれますが、それ以外に飼育員たちしか知らない野生の動きなどを教えてくれるところが感動を与えてくれます。

*所 在 地:〒078-8205 北海道旭川市東旭川町倉沼
*URL:http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/facilityinformation/index.html
*電話番号:0166-36-1104(旭山動物園 広報担当)
*最寄り駅:JR旭川駅 東口前6番乗り場からバス41、42、47番線で約40分
*高速道路:道央道旭川北IC⇒道道37号線で旭川空港方面へ12km