エゾヒグマは道内のほぼ全域に生息していますが、一体何処からやってきたのかを解明するため遺伝子調査が行われました。その結果によると遺伝子の類型として、(1)道北~道央型(宗谷地方から日高地方)、(2)道東型(釧路地方~知床半島)、(3)道南型(胆振~後志以西)と、3つのグループに分類されたそうです。因みに、初めに北海道に渡来したのは(3)グループで遺伝子タイプはチベット系ヒマラヤヒグマの近縁種ということで、日本がアジア大陸と陸続きだった氷河期に大陸から本州に渡来したものと推定されます。2番目に渡来したのは(2)グループで、遺伝子タイプはアラスカ東部に生息するヒグマと同じ系統なので、シベリアから樺太(サハリン)を経て北海道へ来たと考えられます。最後に渡来したのは(1)グループで、遺伝子タイプが北欧やシベリア及びアラスカ西部に分布するヒグマと同系統なので、シベリアから南下し樺太から北海道に渡来したと考えられます。このように北海道に生息する3つのグループのヒグマたちは、それぞれ時間差を以て異なるルートを経て渡来し、各地でそれぞれグループを形成し棲み分けしたと思われます。クマ牧場でヒグマをじっくり観察して見ると、身体の大きさ、体毛、顔の形などに、意外な違いがあることに気付くかも知れません。

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野生のクマを見る方法は?

エゾヒグマが活発に活動する時期になると、札幌のような都会でもしばしば道路を歩いているヒグマが目撃されています。しかし、だからといって現実的には北海道に来たからといってもそう簡単にヒグマに遭遇する訳ではありません。クマ牧場の観察では飽き足らずどうしても野生のヒグマを見たいという人は、知床半島に足を延ばして見ると良いと思います。北海道全域にヒグマは生息していますが、観光客を対象とした“野生グマの見学ツアー”が行われているのは知床半島だけです。因みに、ヒグマの見学ツアーは、大雑把にいうと2つのスタイルがあります。1つは“トレッキング(自分の足で歩く)”による方法と、もう一つは、観光船に乗った“クルージング(海上から眺める)”による方法です。

ヒグマの観察に適しているのは、5月中旬~7月末くらいまでがお勧めの時期です。できれば最低2泊3日の予定で『斜里』か『ウトロ』地区で宿泊予約をして下さい。万が一、1泊2日の日程で不幸にして1日目に“空振り”してしまうと、折角の苦労も水泡に帰してしまいます。知床地方の最寄りの空港は『女満別空港』ですが、空港から更にバスで約2時間移動します。なお、定期便の路線は、JALが新千歳空港、羽田空港の2系統で、ANAは新千歳空港、羽田空港、中部空港の3系統となっています。

トレッキングでヒグマを見る!

このツアーは知床連山を一望にしながら、原生林に包まれた神秘的な『知床五湖』を巡るトレッキングのプランです。ただ、ヒグマの活動が活発な期間中に催行されるツアーは、安全確保のため“現地ガイドの引率”が義務付けられていますので、必ず事前予約の必要があります。

知床五湖巡りのルートは2つあり、1つはレストハウスをスタートして『高架木道(こうかもくどう)』を往復する1.6kmのトレッキングコースです。もう1つはレストハウスをスタートして『地上遊歩道』を周回する1.6km(小ループ)又は.0km(大ループ)のトレッキングコースです。知床五湖巡りはヒグマの出没に影響を受けないので、強い雨さえ降らなければ問題ありません。また、高架木道の両サイドに高圧電気柵(7,000V)が敷設されていますから、ヒグマが歩いていても安心して見ることが出来ます。また、コース内は段差がないバリアフリー構造ですから、車いすの通行も全く問題ありません。ただ、ヒグマが出没した場合の安全管理として厳密に順路が定められているので、折り返し地点から地上遊歩道へ進入することは禁じられています。>

高架木道

クルージングでヒグマを見る!

斜里から車で45分くらい先に進むと、『ウトロ地区』に辿り着きます。更にその先を進むと、『知床横断道路』を通って“知床慕情で有名な羅臼(らうす)”に至ります。因みに、このウトロ地区はヒグマたちのテリトリーに中にあるので、ヒグマに遭遇する確率が非常に高いといえます。詰まり、運が良ければ道路を歩く野生のヒグマが見られるかも知れません。しかし、相手は“獰猛な肉食獣”ですから、車を止めて不用意に車外に出ることは危険です。最近、一部の心無い観光客が“食べ物の与える行為”や、可愛いからといって“小グマへ近づく行為”などが頻発していることから、地元のNPOなどが注意喚起や啓蒙活動に力を入れています。

知床が『世界自然遺産』に登録されてから、国内外から訪れる観光客が非常に増えています。そこで、野生のヒグマを安全に見るため、海上から安全にヒグマを見るためのクルージングが企画されています。ヒグマが活発に活動する6月~9月に掛けて1日2便(3時間15分)運行されていますので、参加されては如何でしょうか。なお、クルージングのプランは、(1)知床岬の突端まで行く『知床岬コース』、(2)知床連山から流れ落ちる滝を眺める『硫黄山コース』、(3)野生のヒグマを観察する『ヒグマウオッチングコース』の3つのプランが用意されています。

知床半島ウトロクルーズ

むすび

知床に行くならエゾヒグマだけでなく、エゾシカ、キタキツネ、エゾリス、オオワシ、オジロワシ、シマフクロウ等々、北海道特有の動物たちが楽しめます。また、動物だけでなく知床固有の山野草も楽しめます。その上オホーツクで採れる魚介は、他では滅多に味わえるものではありません。クマ見物で疲れた身体を温泉で癒した後は、地酒を酌み交わしながら心行くまで“知床の味”を堪能して下さい。