伝説上の生き物として有名なのが、額に一本のツノをもつユニコーンですね。特徴的な姿はシルエットを見ただけですぐに分かります。海にも同じように、ツノを持つ伝説上のがいました。今回ご紹介するイッカクです。19世紀までのヨーロッパでは、イヌイットとの交易時に存在を語られるだけの謎に満ちた生き物でした。その姿が公になり、さまざまな調査研究がおこなわれ、伝説の象徴とされたツノは実は牙(歯)だったことなどが解明されました。ここでは、イッカクの暮らしぶりや牙の役割についてご紹介します。

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イッカクとは

北極海の北緯70度以北の海域に分布。ハドソン湾北部やハドソン海峡、グリーンランドから東ロシアの海域などで見られる哺乳類の仲間です。体長はオス4.7m前後、メス4.2m前後。体重オス1.5t~1.6tにおよびますが、メスの体重は1tに満たないのが一般的です。首や頭部などは黒く、体は茶系の斑点模様があります。特徴といえる1本の牙は、稀なケースを除きオスだけにあり、歯が変形したものです。らせん状の溝がある牙の大半は空洞で強い衝撃に弱く、一度折れると再生することはありません。一般的には1本の牙ですが、約500頭に1頭ほど2本の牙を持つ個体もあらわれます。

タラなどの魚を主に食べていますが、生息海域によっては環境に合わせてイカを捕食する個体も確認されています。繁殖期には一夫多妻制のハーレムを形成しますが、この時期オス同士のメスをめぐる争いがおこります。争いの際に使われる牙ですが、武器として用いられるのではなく、牙の長さなどで勝敗を決めています。

イッカク|牙の役割

さまざまな調査がおこなわれているイッカクですが、謎に包まれいるのが牙の役割です。繁殖期の争いに用いられることは先に述べましたが、これ以外の役割についてはいろいろな説があります。北極海の氷に穴を開けるためや反響定位・エコロケーションためという説から、繁殖期にメスにアピールする役割とする説もあります。比較的新しい研究から、気圧や温度の変化をとらえる感覚器をになっていることが分かりました。また、牙を使いホッキョクダラを捕まえる映像も確認されていることもあり、役割の明確な解明は先のことになりそうです。

おわりに

ここまで、イッカクの暮らしぶりや牙の役割について見てきました。伝説の生き物の時代から人との関わりが深く、中世ヨーロッパではユニコーンのツノとして売買されたり、また漢方薬の材料とされたりした経緯があります。昔から伝統的にイッカクの捕獲を続けてきたイヌイットには、法律で獲ることを認めています。このこと対して、動物保護団体は反対の立場をとっていますが、解決には時間のかかる問題でしょう。