マレーグマとは、名前が表わす通り『マレー半島』の周辺地域一帯に生息している、クマ科マレーグマ属マレーグマ種(1種1属)に分類されているクマの仲間です。マレーグマの分布は、インド、カンボジヤ、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、中国雲南省、スマトラ島、ボルネオ島などアジアの熱帯から亜熱帯地域に掛けた低木森林に生息しています。ただ近年は農作物の食害によって“害獣として駆除される”ケースが多く、それ以外にも“毛皮や漢方薬の素材として密漁される”ケースが多発しているため、年々生息数が減少し『絶滅危惧種』に指定される事態に陥っています。日本の動物園においてマレーグマの人気は、はっきり言うとそう高いとは言えません。個人的にはその理由の多くは、個体数が少な過ぎて“見る機会がない”という事情があるように思います。因みに、日本国内で『マレーグマ』を展示飼育している動物園は12園(2016年7月現在:11都道府県)しか無く、しかも飼育頭数は25頭(オス:13頭、メス:12頭)とかなり“希少性の高いクマ”なのです。

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マレーグマの身体的特徴や性格

マレーグマは、体長100~150cm、体重25~65kgとクマの仲間では最も小柄であることから、“小さいクマ”と言う意味で『Dog Bear(ドッグベアー:犬グマ)』と呼ばれています。また、身体全体が光沢のある黒~濃褐色の短い体毛で覆われていて、胸部に灰白色~黄褐色の三日月形(半球形、円形、V字形、U字形など)の文様がある(ない場合もある)ことから、別に『Sun Bear(サンベアー:太陽グマ)』と呼ばれることもあります。顔の口吻部は他のクマたちと比べて扁平で短く、鼻や目の周囲だけが灰白色ないし黄褐色をしています。また、ひたいには多数の“特徴的なシワ”が刻まれていて、特にオス方がシワの多さが顕著に表れます。その上、顔の大きさの割に付け足しのような“小さな耳”が印象的で、四肢には5本の指があり“手のひらが大きく”鋭く曲がった爪が付いています。因みに、マレーグマの性格は、人に対する攻撃性や凶暴性が低く、クマの仲間では最も“危険性が少ない”クマといわれていることから、“ペットとして飼育”されるケースが珍しくなく、中には子グマの間“子供の遊び相手”とされているケースもあるようです。

マレーグマの生態

マレーグマは、基本的には“夜行性の動物”なので、昼間の大半は木の上での居眠りや日光浴するなどしてのんびり過ごします。ただし、人や天敵などと接触しない密林においては、日中も活動することはあります。マレーグマが歩く時は、前脚が自然と“内また状態”となりますが、これは“木登りに適応する”ため骨格が変形(進化)したものと考えられています。マレーグマは、基本的には夜行性のため『視覚』はかなり劣っています。しかし、その反面『嗅覚』が非常に優れていて“食べ物の臭い”を的確に嗅ぎ分けることが出来ます。元来、森林の中での生活が主であることから、木の実や果実を好んで食べます。但し、食性は雑食性なのでシロアリや甲虫類などの昆虫、げっ歯類などの小動物、トカゲや鳥及び鳥の卵なども捕食します。なお、マレーグマの鋭い爪はシロアリの巣を壊すのに適していて、巣を壊した際に手に付いたシロアリを“20cm以上”の長い舌で絡めて器用に食べます。勿論他のクマ同様にハチミツも大好物です。兎に角、シロアリや木に棲みついた昆虫などを捕食する際には、この長い舌がとても役に立つのです。

マレーグマの子育て

マレーグマは、寒冷地に棲むクマのように冬眠することはなく、時期に拘わらず1年中何時でも繁殖が可能といわれています。妊娠期間は通常95日~100日程度であり、ヒグマの約8か月に比べて著しく短い期間です。マレーグマは、1回の出産当たり通常1~2子を生みますが、稀に3子生むこともあります。生まれた直後の赤ちゃんの体重は、概ね300gくらいですが何故か体毛は全くありません。目を開けるのは生後4週間ほど経ってからですが、見えるようになるには生後7週間ほど経ってからです。因みに、子グマの授乳期間は1年半ほど続きますが、離乳後も更に1年半くらいは母グマと一緒に暮らします。なお、マレーグマの寿命は、飼育下では一般的に20~25年くらいですが、中には35年を超える長寿の例もあります。

マレーグマはきもかわいい!?

私が初めてマレーグマを見た時の第1印象は、ホッキョクグマやヒグマなど大型のクマと比べようもないほど“身体が小さい”ことでした。展示室の掲示板を見て成獣だと判っていても、丸で“子グマ”を見ているような錯覚に捉われました。近くに寄って檻の中を見ると、身体全体が黒く光っているにも拘わらず目と鼻の周囲だけが“薄黄色っぽい色”なので、思わず“道化師(ピエロ)”の顔に見えてきました。誠に失礼ながら思わず吹き出しまいそうです。暫く観察していると、今までだらしなく寝転がっていたのが突然“スックと立ち上がり”、いかにもこぜわしく2足歩行を始めました。その様子を見ていると、テレビの“お笑い芸人”を彷彿させるような仕草を始めました。詰まり、遊び道具がないのに、手を叩いたり飛び跳ねたりなどの芸を始めたのです。だから、マレーグマはきっとエンターティナーの素質を持った可なりの“ひょうきんもの”に違いないと感じました。ひたいに刻まれたシワを見ているといかにも“深刻そうな”振りをして悲壮感を漂わせますが、道化師のような顔とひょうきんな仕草を見ていると、全体的な“アンバランスさ”がとても“きもかわいい”という表現がぴったりだといえます。

終わりに

今からちょうど2年前の2015年(平成27年)7月、私が住む街の市立動物園でマレーグマ(推定30歳:メス)が亡くなるという悲しい事故が起きてしまいました。私はこの事故が起こるほんの2か月ほど前、元気に芸を披露してくれたマレーグマの姿を見たばかりでした。あの“お茶目でひょうきんな”お婆ちゃんマレーグマの姿を見ることができないのは、本当に残念で仕方ありません。