その1
その2
その3
その4

その5

パディントンが我が家にやってきてから半年を過ぎた頃、既に3回のワクチン接種も済んで順調に成長し続けていました。掛かりつけの獣医さんからは、ワクチン接種が終わって1か月くらいは“過激な運動をさせないように”との注意があったため、それまでの散歩は家の近所を周回するコースが主要なものでした。一方、彼は“車でのお出掛け”も嫌いではないようでしたが、ただ車に慣れるまではカーブが多い“下り坂で車酔いする”らしく、辛そうな顔をすることがありました。

しかし、パディントンは少しずつドライブにも慣れて、やがて箱根や伊豆方面など山間部のカーブが多い山道にも耐性ができてきて、殆ど車酔いをすることが無くなりました。ドライブの指定席は何時も助手席に座る“妻の膝の上”なのですが、半開にした車窓から“脚を突っ張って首を突き出す”のが彼流のスタイルでした。パディントンが意識していたか否かは判りませんが、彼が窓から突き出した時“風に煽(あお)られて靡(なび)く耳がとても恰好良く、道を歩く人の目を引き付けたものでした。

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あわや大惨事

獣医さんからワクチン接種が終わったから、“少し負荷をかけた運動させてもいいよ!”とお墨付きを頂いたので、妻は少しずつ散歩コースを延長させていきました。彼にとっては日替わりメニューの新鮮な風景に接するので、日課としていた散歩がとても楽しみだったと思います。梅雨が始まる少し前の休みの日、私にとって初めての“本格的な散歩デビュー”でした。その日は丸で暑い夏の日のような気温でしたが、張り切って片道2kmくらいの先にある山の上にある公園に出掛けました。公園で一休みした後、リードを引っ張って帰ろうと促してもパディントンが蹲(うずくま)って動こうとはしません。

私は急いでパディントンを両手で抱え、約20分下り坂を必死に走り続けて家に辿り着きました。早速獣医さんに電話で状況を伝えると、30分くらいしてから往診に来てくれました。獣医さんは概ね状況を把握していたようで、直ぐに輸液バッグを取り出し処置を始めました。注射針が刺さる時、パディントンがむっくと起き上がり激しく抵抗しようとしましたが、私が羽交い絞めに押さえ付けた状態で点滴注射を受けさせました。獣医さんが帰る時、“暑い日中の散歩はダメ”と厳しく注意を受けました。なお、点滴注射の2~3時間後には、パディントンは何事もなかったように元気に動き始め一件落着しました。

水を補給することなく炎天下に晒されたので彼は『熱中症』に陥った訳です。飼い主とすれば、不注意極まりない行動だったと深く反省した次第です。その日の気温は30℃近く迄上昇していましたので、彼がアスファルトの路面から受ける伝道熱と輻射熱は体感で40℃くらいあったのかも知れません。私たち夫婦はその苦い経験を生かして、それ以降は常にパディントン用の水を携行する習慣を身に付けました。

いい湯だな?

パディントンが初めてトリミングを経験してから2か月くらい経った頃、彼は既に生後10か月を過ぎ益々行動が活発になると共にその範囲も広がっていきました。ある日のこと、お弁当を持って妻と連れだって近くの河原にピクニックに行きました。その場所は川のほぼ中流部に位置することから、こぶし大の石ころが多くとても歩き難い所でした。しかし、パディントンはとても気に入ったらしく、リードを外すと草むらに入ったり水辺に行ったりして、一人(?)で大はしゃぎしました。途中食事を済ませ2時間くらい遊びましたが、家路に就く頃は彼の身体は枯草や砂ぼこりでドロドロでした。

我が家に帰ってきてパディントンはお風呂場に直行し“初めての洗濯”を経験しました。既に用意していたシャンプーとリンスを使って全身隈なく洗剤で汚れを洗い流し終えると、意外なほど身体が小さいことに気付きました。トイプードルの体毛は意外と硬いので、一見すると“着膨れ”ならぬ“毛膨れ”しているのです。彼の身体がすっかり綺麗になったので、私は彼を背面からが抱え湯船に入れました。その途端彼は大暴れして、私の身体は“爪で引っ掻かれて満身創痍”となりました。勿論彼にとっては風呂に入るのは初体験でしたので、正にパニック状態に陥ったようでした。後で気が付いたのですが、湯船に浸かったことも然(さ)ることながら、彼にとってはお湯の温度が高過ぎたのかも知れません。という訳で、パディントンにとって“最初で最後の入浴体験”となりました。その一件以降、専らシャワーでの洗濯となりましたが、彼は二度と暴れることはありませんでした。

犯人誰だ!?

妻が二男のお昼ご飯をテーブルに用意して、パディントンを置いて外出していた時のことです。二男がお腹を空かせて帰ったところ、食卓には“おかずが一つもなかった”と後で帰った妻に苦情を言ったそうです。因みに、おかずは鶏肉のから揚げと卵焼きだったそうですが、恐らく“窃盗犯はパディントン”であることは疑いようもありません。

テーブルの高さは70cmくらいですから、どう考えても一旦椅子に飛び乗ってからテーブルによじ登ったものと思われますが、パディントンに聞いても“黙秘権の行使”で真相は蚊帳の中です。私は、“引き戸を鼻で開ける”瞬間を目にした経験から、口にはしませんでしたが、多分少し離れたところから助走して“直接70cmのテーブルに飛び乗った”のでは、と推測しました。妻は、それ以来テーブルの上に食べ物を放置することは止めたようでから、とうとう真実は解明されないままでした。

むすび

パディントンが我が家にやってきてから1年過ぎる頃には、私たち家族もパディントンも色々な経験を積み重ねました。その中には勿論失敗もありましたが、私たち家族がこれから先行き彼と一緒に生活していく上で必要な知識も沢山学びました。そして最も重要だったことは、パディントンが“家族の一員として自らの地位を確立した”ことだったと思います。